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診療内容

当グループでは、胆管・胆嚢・膵臓の疾患に対して高度な専門性をもった検査・治療を提供しています。主な対象疾患は以下の通りです。

近年、健診の腹部超音波検査により膵嚢胞や膵管拡張を指摘されて受診する方が増加しており、とくに膵がんの早期発見を目指して、嚢胞性腫瘍(膵管内乳頭粘液性腫瘍: IPMN)の経過観察や精密検査、膵管狭窄・拡張の精査に積極的に取り組んでいます。

 

また、超音波内視鏡下吸引穿刺細胞診(EUS-FNA)をはじめ、山梨県内で実施施設が限られる超音波内視鏡を用いた腹腔内膿瘍ドレナージ(EUS-PFD)や瘻孔形成術(EUS-BD)も積極的に行っています。

 

限られた病床数の中で、できるだけ山梨県内で専門的な胆膵疾患の診療を必要とする患者さんを受け入れるため、急性期治療後の患者さんや化学療法治療などは、紹介元や県内の関連施設と連携して診療を行っています。皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

胆膵領域での入院患者内訳

年別・腫瘍疾患の延べ数

(2023年:入院患者総数 659名)

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胆管・胆嚢・膵臓の疾患に

対して高度な専門性をもった

検査・治療を提供しています。

胆管・胆嚢・膵臓の疾患に

対して高度な専門性をもった検査・治療を提供しています。

胆管・胆嚢・膵臓の疾患に

対して高度な専門性をもった検査・治療を提供しています。

胆膵領域

ナースフォーム

超音波内視鏡

(EUS)

 超音波内視鏡(EUS: Endoscopic Ultrasonography)は、胃カメラの先端に搭載された超音波装置(エコー)で、消化管の内腔から周囲組織・臓器などの診断をおこなう検査です。この検査は通常の胃カメラと同様に口から挿入します。

EUSは体表からのエコー検査と異なり、胃や腸の中の空気や腹壁、腹腔内の脂肪、骨がエコーの妨げになることがなく、目的の病変(特に膵臓や胆道)の近くから観察が行えるため、より詳細に病変の情報を得ることができます。

 

よって通常の画像検査では診断することのできない膵臓・胆道(胆嚢・胆管)の早期癌などの小さな病気を発見するのに有用な検査です。また従来、画像診断(超音波、CT、MRI等)だけでは確定診断が困難であった病変に対し、超音波内視鏡を用いて病変の一部を採取すること(超音波内視鏡ガイド下穿刺:EUS-FNA:Endoscopic Ultrasound guided Fine Needle Aspiration)もできるため、質的診断が可能となります。

 

EUS-FNAの方法としては、膵臓や胆嚢・胆道の病変に限らず、腹腔内腫瘍・リンパ節や腹水、縦隔内の病変に対し、食道、胃、十二指腸などから超音波内視鏡で病変を観察し、介在する血管などがないことを確認して、穿刺針にて穿刺し、検体を採取します。

検査・処理実績

(2007-2024年集計)

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内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)
件数推移

(2024年:612件)

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内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査

(ERCP)

 胆管と膵管の出口(十二指腸乳頭)は胃の奥の十二指腸にありここから胆汁と膵液が腸管の中に分泌されています。

膵がん、胆管がんそのほとんどが膵管・胆管から発生しており病理学的診断のためにも、腫瘍により閉塞した場合の解除のためにも内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)は胆管や膵管に直接アプローチできる重要な検査です。

また胆管炎の時にチューブをいれて感染胆汁を排出させる治療や胆管結石治療もERCPで行っています。

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研究内容

当グループでは、難治性胆膵疾患の病態解明や新たな診断・治療法の構築を目指し、以下の研究を進めています。

  1. 膵がんの早期診断
    連続膵液細胞診や遺伝子解析を組み合わせ、膵がんの早期診断能向上を目指しています。

  2. 胆膵内視鏡・経皮的処置の有効性向上
    処置データを統計解析し、偶発症の危険因子や治療成績の向上策を検討しています。

  3. AIを活用した画像診断
    CT画像や胆道鏡画像をAI解析し、予後予測や診断精度向上を目指す研究を進めています。

  4. 次世代シークエンサーによる遺伝子解析
    臨床情報と遺伝子データを融合し、診断・治療法の革新を目指しています。

これらの研究は山梨大学倫理委員会の承認を得て実施しておりますが、詳細は山梨大学倫理委員会のサイトをご覧ください。

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それぞれの詳細な内容を以下にご紹介させていただきます。

膵癌の早期診断を目指した臨床的検討及びデジタル化遺伝子解析

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膵癌の予後が厳しいことは重要な課題であり、早期発見が重要なのは言うまでもありません。早期の膵癌は画像で腫瘤が描出されることが少なく、膵臓の中心を流れる膵管の狭窄や膵嚢胞が存在する膵癌高危険群とされる症例を検診施設などからご紹介いただき、精密検査及び慎重経過観察(サーベイランス)を行っております。高危険群とされる症例から膵癌を確実に診断する手法については発展途上であり、我々は通常行われている連続膵液細胞診に精密な遺伝子解析を加えることで、診断能の上乗せが可能かどうかを検討しております。方法としては、連続膵液細胞診検査を行う際の余剰検体(診断に用いる検体の余剰分で廃棄されるもの)より、DNAやmicroRNAを抽出してさまざまな遺伝子の発現を測定します。

ビルの入り口
胆膵内視鏡処置および経皮的処置の有効性と安全性向上を目指した観察研究

胆膵の処置としてはERCP(内視鏡的逆行性膵胆道造影検査)や超音波内視鏡検査(EUS)に関連したものが中心となりますが、他の消化器領域に比較して膵臓や胆道といった臓器が処置具の届きにくい深部に存在し、また、臓器の特性から偶発症発生時には重篤になりやすい背景が存在します。

 

処置自体も発展途上のものが多く、その有効性向上のためにはさらなる工夫や処置方法の改善が必要となります。胆膵関連処置の有効性や安全性を向上させることを目的として、自施設で経験させていただいた症例・手技をデータベース化し統計解析をすることで、以下のような課題の解決を目指します。

a. ERCP関連手技偶発症の頻度及び危険因子

b. EUS関連処置偶発症の頻度及び危険因子

c. ERCP関連手技の成功率および不成功の要因分析

d. EUS関連手技の成功率および不成功の要因分析

e. 胆道ステント開存期間および短期ステント不全の要因分析

f. 胆道処置後の予後改善効果の解析

g. EUS-FNAおよび胆管生検で得た検体の病理診断能

h. 内視鏡下生検検体の遺伝子パネル検査前の病理学的適否とその因子解析

内視鏡的膵管処置における先端Small J型ガイドワイヤーの安全性及び有用性の検討

膵管処置は胆管に比べて難易度が高く、膵炎などの偶発症のリスクが高いと報告されています。当院では膵管処置に先端Small J形状ガイドワイヤーを導入しており、その安全性と有効性を従来型(アングル型)のガイドワイヤーと比較検討します。

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胆膵疾患における造影超音波内視鏡診断

超音波内視鏡検査下に超音波造影剤ソナゾイドを静脈内に投与することにより病変内の血流情報を得ることができ、胆膵疾患の診断に有用と報告されています。しかし、現在、ソナゾイドは胆膵疾患に対しては保険適応が認められていないため、保険診療でこの検査を行うことはできません。当院では診療上有用な情報が得られる可能性がある場合は、先進医療開発等該当患者として病院に申請して当検査を行っています。

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付箋

人工知能による消化器画像診断能向上を目指した研究

近年発達目覚ましい人工知能はさまざまな領域で応用が進み、医療の世界でも診断補助を中心として実臨床への実装が現実的となっている。現在は胃腫瘍や大腸腫瘍での検討が中心であるが、胆膵領域への応用はこれからの課題になると思われる。我々は診療で課題となる点を解決すべく、人工知能の応用を検討している。これまでに報告した検討の一部を以下に紹介する。

▷膵癌の術後早期再発例におけるCT画像の特徴

膵癌の手術後に早期再発する症例が存在するが、手術前のCT画像の人工知能解析を行うことで、術後早期再発の予測が可能かどうかを検討した。結果として、膵頭部症例、 Rim enhancement(辺縁の造影効果)を伴う症例は、NAC(術前化学療法)により再発を抑制できる可能性があり、動脈相で造影不良である症例は、NACの効果が不十分である可能性があり、近年発展著しいAIによる画像分析でより正確な再発予測や予後予測が可能となる可能性がある、と報告した。

▷胆道癌の術前胆道鏡検査において、切除予定断端の良悪性診断を目的とした人工知能解析

胆道癌は胆管の水平方向に広く進展しやすいことが知られており、手術前に進展範囲を診断することは重要である。現在は造影CT所見で済ませたり、胆道鏡検査時の生検検査にて診断を行なっている。このような背景で胆道鏡画像所見を人工知能に学習させ、切除予定部位の所見の良悪性診断を行うモデルを作成すべく、ディープラーニング人工知能解析を行っている。

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レーザーキャプチャーマイクロダイゼクションと次世代シークエンサーを組み合わせた消化器癌遺伝子解析

近年遺伝子解析技術が発達し、従来は困難であった微量な検体からも複数の遺伝子変化を検出することが可能となりました。我々の教室では、患者様から同意を得て頂いた試料あるいは診断や治療で余った資料などからDNAやRNAを抽出し、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析を行っております。これらの遺伝子データと臨床情報を合わせて解析し、消化器疾患の病態解明やより良い診断・治療法の開発を目指しております。

研究には臨床研究、基礎研究、臨床と基礎を融合させたトランスレーショナルリサーチが存在すると思いますが、臨床医である我々は基礎研究のみに没頭して臨床の技術を低下させるわけにはいきません。臨床研究を通して臨床の技術を磨きつつ、基礎研究となる遺伝子解析を臨床と融合させることで、将来臨床に有用となる新しい知見を得ることを目指しております。このような研究は基礎研究者には不可能であり、豊富な臨床情報と臨床検体を持つ我々のみが可能な研究です。

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<研究成果の例>

膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN)の良悪性診断を膵液の遺伝子解析で行うことを試みた。対象はIPMN切除50例と膵液19検体。遺伝子はIPMNで高頻度にみられると既に報告されているGNAS, KRAS, RNF43を含む52遺伝子を検索した。

IPMN切除例の遺伝子解析から、KRAS (88%), GNAS (76%), TP53 (34%), RNF43 (30%), SMAD4 (18%), KMT2C (18%)が変異として検出された。切除例の臨床背景と遺伝子解析の結果から、悪性IPMNでみられる遺伝子変異マーカーとして、多変量解析からTP53が有意なものとして同定された。

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⬆︎ (IPMN50例で検出された遺伝子変異一覧)

切除症例とペアになった19例の膵液で、悪性マーカーであるTP53が検出可能か検討した。良性例では変異は検出されず悪性例の5例で切除組織からTP53変異が検出されていたが、このうち4例から切除組織と同じパターンのTP53変異を検出可能であった。

 ④

今後、画像のみでは診断しきれない悪性IPMNを膵液の遺伝子解析で診断することを目標として研究を継続していく予定。

(文責:高野伸一)

超音波内視鏡(EUS)件数推移

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膵臓がん

胆管がん

胆嚢がん

膵神経内分泌腫瘍

膵嚢胞性腫瘍

十二指腸乳頭部腫瘍

急性膵炎

慢性膵炎

自己免疫性膵炎

閉塞性黄疸

胆管結石

急性胆管炎

胆嚢炎

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